当社は、2023年に設立50周年を迎えた取出ロボットのリーディングカンパニーです。2025年4月から社名を「YUSHIN株式会社」に変更します。積極的な海外展開や人的資本強化に取り組む同社は、いま変革期を迎えています。新たな一歩を踏み出す背景や国内外の事業展望、組織づくりについて、小谷社長に未来像と想いを詳しくお聞きしました。

小谷高代

代表取締役社長

2008年入社。研究開発部門責任者、副社長兼開発本部責任者を経て、2021年より現職。博士（工学）、MBA（修士/経営）を修了。

2008年入社。研究開発部門責任者、副社長兼開発本部責任者を経て、2021年より現職。博士（工学）、MBA（修士/経営）を修了。

真のグローバル企業として、進歩と安心を世界中の工場にとどける

――まずは、社名変更の理由を教えてください。

社名変更の理由は、大きく２つあります。１つは、新しい時代に合わせた私たちの進化を伝えること。そしてもう１つは、真のグローバル企業を目指したいという想いからです。

新しい社名「YUSHIN」にも、「信用ある会社でありたい（有信）」「心有る仕事をしたい（有心）」という意味を込めています。これは創業当初から続く大切な考え方です。当社は産業用ロボットや自動化装置等を作っていますが、技術だけではなく、お客さまとの信頼関係や心の込もった仕事が重要だと考えているため、社名に残したいと考えました。以前からお客さまには「ユーシンさん」と呼ばれていたこともあり、新社名の社内発表時にも、社員からは大きな違和感なく受け入れられました。

そして、当社を初めて知る方々にとっては、新しい時代に向けて進化している会社だと伝えたい想いもあります。グローバルに通用する企業としてのブランドを確立し、より広い視野で活動を展開していきたいと考えています。

――すでにグローバルカンパニーという印象を受けますが、その上で「真のグローバル企業」を目指す背景や展望をお話しいただけますか？

たしかに創業当初と比べると海外拠点も増え、初の海外M&Aも実現し、グローバル展開を推進しています。しかし、世界各地のお客さまによりよい商品とサービスを提供するためには、まだまだ課題や改善余地があります。

例えば、当社は国内外50か所以上に拠点を構え、それぞれの拠点に属する現地スタッフが販売やサービスを担っていますが、これまでは、ロボットの海外生産は中国マーケット向けの中国での製造のみで、他の国々には日本で製造したロボットを販売していました。世界各地のお客さまのニーズに適切に応えていくには、地域特有のマーケットに合わせた製品開発が必要です。今回新たに欧州に開発組織を持ったことで、現地の市場ニーズを直接反映した商品の提供が可能になりました。

今後より価値の高い商品を各国のお客さまにとどけるためには、世界各地で仲間との連携が必要です。さらにグローバルでの連携を深め、知見を蓄積しながら、各地域のマーケットに合わせた製品開発を推進していきます。また、販売やサービスの現地化を加速し、グローバルな視点で価値を提供できる体制を強化していきます。

――小谷社長が描く、お客さまへの提供価値と事業の未来をお聞かせください。

お客さまを取り巻く課題として、世界中の製造業の人手不足が挙げられます。当社が掲げるコーポレート・アイデンティティ（CI）の「まず、想いにとどく」をスローガンに、ものづくりの現場で発生する人手不足や労働環境の改善に貢献し「進歩と安心を世界中の工場にとどける」ことを目指しています。

例として、当社の取出ロボットが提供する価値についてお話しします。

日本や先進国では、すでに製造現場で取出ロボットが使用されていることが多いです。ただ、取り出した後にも様々な工程があり、その後工程には人が介在しているため、後工程の自動化を進めることは当社が提供する価値の一つです。

発展途上国では、取出ロボットの導入が進んでいない工場が多くあります。金型から製品を取り出すという作業は、危険な作業です。当社のロボットを導入することで、そうした危険作業を自動化し、安全な労働環境をつくることも価値のひとつです。

さらに、ロボット技術の高度化に向けた技術開発を進めることで、従来の単純な取り出しの自動化にとどまらず、より複雑な動作を実現し、お客さまの多様なニーズに応えることも重要な価値だと考えています。

このように「進歩と安心を世界中の工場にとどける」ことが当社の提供価値です。進歩とは、技術力の向上や新たな提案を通じて、お客さま工場の生産性向上や工場経営をより良くしていくことへのお手伝いを意味しています。安心とは、お客様が必要とされるタイミングで商品やサービスを提供し、当社のロボットが長く安定して稼働し、トラブルが最小限であることです。万が一問題が発生しても、すぐに対応できる体制づくりを大切に考えています。また、ロボットの使い方についても「こうすればもっと生産性が上がる」といったお話をさせていただくなど、お客さまが安心して相談できる存在であることも、当社の提供価値です。

個の専門性を高め、全社の連携強化を目指す組織づくり

――組織の理想像と方針を教えてください。

「進歩と安心を世界中の工場にとどける」ことを掲げ、それを仲間である社員とともに実現したいです。そのために、まずは社員がやりがいを持てる風通しのよい職場を作ることが大事だと考えています。また、進歩と安心を世界中の工場にとどけるためには、様々な職能の社員が必要です。各社員が高い専門性を持ち全社での連携が進んだ組織風土が理想です。

すでにコーポレート・アイデンティティ（CI）浸透に向けた研修・制度設計を推進していますが、土台となるのは風通しのよい職場です。チャレンジができ、応援してもらえ、安心して発言できるような、風通しよく心理的安全性の高い組織になるよう全社を進化させていきたいと考えています。

――「各社員の専門性の進化と全社の連携」について、もう少し教えていただけますか？

各社員の専門性の進化については、現在も基本的な研修を用意していますが、技術的な観点等からさらに充実させる取り組みを進めたいと考えています。

専門性を高めるためには、継続的な学習が欠かせません。社内研修に加え、外部研修への参加を部署長が促したり、大学との共同研究や外部の専門家を招く機会も設けています。

会社全体として、日々学び専門性が高まる組織へと進化するためには、目標設定や制度設計も重要です。ただし目標や制度を押し付けるのではなく、学ぶことを楽しむ文化を醸成することが重要ではないかと思います。よい仲間が集まり、楽しそうに学んでいる姿が周囲に影響を与え、「自分もやってみよう」と自然に学びが広がる、学んだことを業務に活かすことで、成果が出る経験を組織で共有する、ということが大切だと思います。

全社の連携については、個々の業務に精通するだけでなく、隣接する業務や全体の流れを理解し相互連携を強化する中で、仕事をチームとして進めたいという意図です。

当社では、営業、設計、調達、製造、サービスといった各部門に加え、開発、総務、経理、人事、ITなど、それぞれ専門性を持つ組織が機能しています。部門ごとの最適化・専門化が進んでも、社内の連携が不足すると、顧客に対する価値の低下を招くことがあります。お客さまは企業内の連携不足をまるで見えているかのように察知されると考えています。仮に各部門が個別に最善を尽くしていたとしても、全社の連携がなければ、商品やサービスの質が低下していると感じられてしまいます。

全社最適を意識することが、より質の高い製品やサービスの提供につながるため、非常に重要だと考えています。

風通しのよい組織風土が、企業の付加価値創造力を高めていく

――トップダウンな経営を選ぶ経営者もいるなかで、小谷社長が風通しのよい組織風土を重視する理由が気になります。

一般的に、風通しのよい組織は「働きやすさ」の観点で語られることが多いですが、私は「価値を創造する力を高めるため」だと考えています。どんなに優れた経営者やリーダーでも、一人で得られる情報には限りがあります。しかし、社員が気づいたことを安心して発言し、自由に情報を共有できる環境があれば、組織全体で世の中の変化を素早く捉えることができます。そして、そのオープンな対話の中から新たな発見が生まれ、付加価値の高いアイデアが生み出されていきます。だからこそ、風通しのよい組織づくりは、グローバル企業として成長するために不可欠だと考えています。　

この考えには私自身の経験も影響しています。私はもともと開発部門の出身です。自分自身で直接お客さまの声を聞き、市場の変化を学ぶことも大事ですが、１人や１つの部署で入手できる情報は限られています。他の情報を持っている社員の何気ない一言や、他部署で見えている業界情報から「そういうことか」と気づかされることが何度もありました。部門や部署を超えたコミュニケーションが会議や日常の会話の中で成され、より多くの気づきを得ることが、より良い商品やサービスにつながることを実感しています。

異なる立場の人同士が顔を合わせ、インタラクティブに意見を交わすことで、思いもよらないアイデアや付加価値が生まれます。こうした付加価値の創造こそが、企業が存在する意義であり、社員が会社に集う意味なのではないでしょうか。

――組織制度・施策を考える際に、意識しているポイントはありますか？

施策を考える際に、私は「働きやすさ」と「価値創造力の向上」が両立することを大事にしています。単に働きやすくなっただけでは、会社の価値創造力が上がらず、結果的に誰にとってもよくない状況になるかもしれません。働きやすさは当然重要ですが、それが価値創造力の向上につながるかどうかを強く意識しています。

――最後になりますが、読んでくださった方へのメッセージをお願いします。

当社の手掛ける産業用ロボットや自動化装置は一品一様で作り込んでいくものです。機械、電気、ソフトといった様々な技術の組み合わせによって成り立っています。また、それを営業部門が提案し、設計部門が設計し、調達部門が納期に合わせて必要な部品を手配し、製造部門が製造し、最後にサービス部門が据え付けをする。そして、その後も柔軟に対応しながら10年以上メンテナンスを続けるという、まさにチームワークが求められる仕事です。技術的にも総合技術のような形で、日本人の強みにマッチしている産業だと考えています。

私は、YUSHINを世界の中で「ああ、こういう素晴らしい仕事をしているのか」と認識されるような輝く企業にしたいです。私たちが届けているのは「進歩と安心」なのだと、世界中の工場に実感してもらえるような会社を目指しています。

そしてこれを仲間とともに実現していきたいと思っています。勉強し、努力し、心ある仕事をしたいと思ってくださる方にぜひ入社していただきたいです。そして、現社員やこれからご入社くださる方々が「ここを職場に選んでよかった」と思って長く勤めていただけるような会社づくりを、私自身も仲間とともに頑張りたいと考えています。

「進歩と安心を世界中の工場にとどける」変革を続ける社長が描く、当社の未来と組織づくり

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